IC21のブログ

2026/06/26

梅雨とともに暮らす―第四回 木が呼吸する暮らし

梅雨になると感じる「暮らしの重さ」

 

こんにちは、IC21です。

梅雨の季節になると、家の中の空気が少し重たく感じられます。

クローゼットの奥の湿気、衣服のにおい、紙類の波打ち。

便利な収納が増えたはずなのに、なぜか暮らしの質は上がっていないような気がする。

そんな違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。

 

私の相棒、桐ダンスが教えてくれること

私は、長く使っている桐ダンスがあります。

昔ながらの、婚礼箪笥、桐の箪笥です。

(実物を見たことのある方はどれぐらいいらっしゃるかしら?💦)

けれど、

その存在は今の住まいの中で、どんな最新のクローゼットよりも頼もしい相棒になっています。

梅雨でも衣服がかびない。

着物はいつ開けてもすっと空気が澄んでいる。

引き出しを一段閉めると、別の段がひょこっと出てくる

(この技術、わかりますか?気密性が高く、引き出し同士が空気を押し合う現象です)

そんな“おおらかさ”も含めて、桐ダンスは呼吸しているのだと感じます。

便利さではクローゼットに負けるかもしれない。

でも、暮らしを守る力は、桐ダンスの方がずっと強い。

 

「大切なものをしまう箱」が持つ力

こうした体験をしていると、「大切なものをしまう箱」という存在そのものが、 どれほど暮らしを支えてきたのかを思い出します。

茶箱という“最強の保存箱”

たとえば、茶箱

お茶を湿気や温度変化から守るために、桐と金属箔を組み合わせた、昔ながらの“最強の保存箱”です。

今ではお茶だけでなく、写真、手紙、布、思い出の品をしまう人も多いと聞きます。

素材の力を借りて大切なものを守るという知恵は、時代が変わっても変わらないのだと思います。

 

無垢材の小さな棚や箱がつくる「安心の場所」

また、無垢材の小さな棚や箱も同じです。

木は呼吸し、湿度を調え、においを吸い、中に入れたものを自然に守ってくれます。

上面が閉じられる箱や、扉のある小さな棚は、どなたにとっても扱いやすく、 暮らしの中で“安心の場所”になってくれる。

便利な収納システムやプラスチックケースにはない、 「しまう」という行為そのものの豊かさが、そこにはあります。

 

便利さを追い求めて失ったもの

最近、私はよく思うのです。

私たちの暮らしは、便利さを追い求めるあまり、 素材が本来持っていた“調える力”を手放してしまったのではないかと。

スマートホーム、スマート家電。 自動化は確かに便利です。

けれど、湿度や空気の質といった“暮らしの根っこ”は、 実は昔の家具や道具の方がよくわかっていたのかもしれません。

 

職人の減少と、失われつつある技術

そしてもうひとつ。

こうした家具をつくる職人が、年々減っています。

指物師が普通に民藝をつくっていた時代から、大量生産の波に押され、 技術も素材も静かに姿を消しつつあります。

いいものをつくれない国は、豊かさを失うとおもいます。

これは経済の話であると同時に、文化の話でもあります。

 

呼吸する家具を、もっと身近に

だからこそ、思います。

桐ダンスそのものを普及させるのは難しくても、 “呼吸する家具の価値”を、もっと身近な形で伝えていけたらな と。

桐の米びつ。

桐の衣装ケース。

無垢材の小さな棚やスツール。

茶箱のように、大切なものを守るための箱。

どれも、湿度とともに生きる日本の暮らしに寄り添ってきた道具たちです。

 

素材が呼吸するということ

梅雨の不快さを感じるこの季節だからこそ、

素材が呼吸するということが、どれほど暮らしを支えてきたか 少し立ち止まって考えてみたいのです。

 

おまけ:

これから梅雨が明けると、心は夏休みやレジャーへ向かっていきますね。

インテリア業界としては、ここから少し動きが落ち着く時期に突入します。

 

古寺や寺院の建具を見ていると、 木を知り尽くした昔の大工たちの技術の高さに感激すると同時に、

空気の動きまで感じられて、なんともおもしろい体験ができます。

 

夏のご旅行で古い建物を訪れる機会があれば、 そんな“木と空気の呼吸”を実際に感じてみるのも良いかもしれませんね。